行政処分を受ける可能性について

2020年08月21日

廃棄物処理法の行政処分には、(申請に対する)不許可処分、許可の取消処分、事業停止命令、改善命令、措置命令などがあります。ここでは、排出事業者が受ける可能性がある「改善命令」と「措置命令」について解説します。

行政処分とは、法律の規定に則って行政が国民の権利と義務を決定することで、例えば許可などの特別な権利を与える行為を含みます。特に、一度与えた許可をはく奪したり、何らかの命令を出したりすることを不利益処分というのですが、ここでは行政処分を主にこの不利益処分のこととして話を進めます。 

改善命令

改善命令は法第19条の3に定められています。要約すると、

産業廃棄物処理基準に適合しない処理が行われた場合、適正処理を確保するため、その処理を行った者に対し、廃棄物の保管、収集、運搬又は処分方法の変更その他必要な措置を命ずることができる。」

ということです。基準に合わない場合に出せる命令で、基準に合うように改善させる、という趣旨なのでしょう。実は、条文中には「改善」という表現はありません。 

命令の対象者は「行った者」ですので、実行者本人です。

措置命令

措置命令は、法第19条の4~6で定められています。特に19条の5を要約すると、

「産業廃棄物処理基準に適合しない処理が行われた場合において、①生活環境の保全上支障が生じ、又は生ずるおそれがあると認められるときは、②次に掲げる者に対し、その支障の除去等の措置を講ずべきことを命ずることができる。」

ということです。改善命令との違いは赤字の、①生活環境の保全上支障がある、②命令の対象が広い、というところです。つまり、基準に合わなくても、具体的な問題=生活環境上の支障がなければ措置命令までは出されません。その分、事態は深刻ですので措置命令の対象が広くなります。具体的には以下の通りです。

  • 措置命令の対象

その処理を行った者

委託基準違反orマニフェスト違反or措置内容等報告書を出さなかった排出事業者

上記の違反を要求、教唆、ほう助した者

どちらの行政処分を受ける可能性が高いのか?

改善命令の対象はいわば実行犯だけですので、意図的に問題を起こそうとしているのでなければ、排出事業者が改善命令を受ける可能性は低いでしょう。

措置命令は、処理委託しただけの排出事業者も対象になります。上で要約した法第19条の5では明確な違反者が対象ですが、19条の6では「適正な対価を負担していない」「そのような処理がされることを知ることができたとき」「排出者責任の趣旨に照らし適当なとき」も対象となります。

したがって、排出事業者としては措置命令を受ける可能性を考慮すべきでしょう。対策としては、

・未然防止:処理業者を慎重に選定すること

・法令順守:上記の措置命令対象とならないように常に法令順守に努めること

・行政対策:早めの段階で行政とコミュニケーションをとっておくこと(行政処分という強制手段が不要と思われる良好な関係を築いておくこと)

・支障対策:措置命令の要件である「生活環境の保全上の支障」がないようにすること(有害な廃棄物の処理委託には注意する、支障があれば自主的に除去する、など)

が考えられます。

CASE STUDY

事例

仮に管轄行政が、処理業者が不法投棄した廃棄物を、排出事業者に撤去するように要請や行政指導をしてきたとしましょう。口頭でも文書でもよいですが、要は「もともとの排出者なんだから、撤去すべきでしょ」というお願いです。

これは法律上の根拠がないため、従わなくても法令違反にならず、何らかのペナルティを受けることはありません。

では、上記のような措置命令(行政処分)を受けても、それに従わない処理業者や排出事業者に対して、行政は何ができるのでしょうか。命令を根拠に撤去を物理的に強制できればよいのですが、そうもできません。

検討

まず、行政処分を無視したということで、社会的に問題視されたり、マスコミに取り上げられたりするという事態は想定できますが、ここでは検討対象から外します。

手始めに措置命令の条文を確認します。法第19条の4~6では「命ずることができる」と記載されていますが、命令を受けた者がそれに従わなければならないという説明はされていません。このような場合、関連する条文がその後に続いているか、ない場合は罰則に規定があることが多いです。

代執行~差し押さえ

すぐ後の第19条の8には「必要な措置を都道府県知事が自ら行う」(いわゆる「行政代執行」)について規定があります。さらに代執行にかかる「費用の徴収については、行政代執行法第五条及び第六条の規定を準用する」ということで、これをたどっていくと結局は差し押さえ~競売ができる規定につながります。

財産がある場合は、それを持っていかれるということです。むろん処理業者は、そうなる前に財産を隠そうとするのですが。

罰則と欠格要件

また、第26条に3年以下の懲役、300万円以下の罰金の対象であることが記載されていますので、会社や代表者が刑罰の対象になります。有罪が確定すると、欠格要件にもなりますので、処理業者は許可の取り消しと5年間は許可を受けることができなくなります。

もちろん、措置命令に従わないような処理業者であれば、有罪が確定する前に許可が取り消される可能性が高いのですが。

その他、行政処分の内容に不服がある場合は、訴訟を起こすこともできますが、いずれにせよ、行政処分を無視するという選択肢は、ありえないというべきでしょう。

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「マニフェスト交付等状況報告書」は、正式には「産業廃棄物管理票交付等状況報告書」と言いますが、“産業廃棄物管理票”は通称マニフェストですので、「マニフェスト交付等状況報告書」「マニフェストの報告書」、または単に「交付等状況報告書」などと呼ばれています。

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