自動車リサイクル法はこれからどうなる?

2020年10月19日

自動車リサイクル法をご存じでしょうか。普段の生活ではまず話題にならないので、知名度は低いですが、車を購入する際にはリサイクル料金も同時に払っているはずですので、覚えていらっしゃる方もいるかもしれません。車の購入時にリサイクル料金を支払う、いわば前払い方式のため、廃車時に費用負担が生じず、不法投棄の防止にもなります。集めたリサイクル料金は、自動車をリサイクルする際にかかる費用に使われます。

シュレッダー(破砕機)に投入される前の使用済み自動車
シュレッダー(破砕機)に投入される前の使用済み自動車

具体的には、破砕する前に①エアバッグ、②フロンガス、を取外して適正処理する費用と、さらに破砕後に金属などを取り除いた後に残る③ASRという残さを適正処理する費用を補填します。これらを取り除けば、自動車は金属+プラスチック等の塊ですので、価値があるスクラップとして取引され、不法投棄の恐れもありません。

上記写真は、破砕機に入れる前の状態のもので、①エアバッグと②フロンガスと、その他の金属やオイル等を取った(はずの)自動車を、運搬・保管効率を高めるために圧縮してあります。

別扱いの理由

自動車リサイクル法の肝は、この3つの処理費の補填なのですが、なぜこれらだけ別扱いなのでしょうか。

  1. エアバッグは事故時に瞬時に膨らませるために火薬が使われています。そのため、破砕前に取り外しておかないと爆発や火災の原因となります。
  2. フロンガスは、エアコンの冷媒として使われるもので、オゾン層破壊や温暖化の原因となりますので、これも破砕する前に抜いておかなければなりません。
  3. ASRは、香川県の豊島の大規模不法投棄事件の主な原因となったもので、自動車に使用されている多種多様なプラスチックが混合しています。

もしこれらについて費用を補填しないと、火災が多発(エアバッグ)したり、不適正処理(フロンガスの大気放出)や不法投棄(ASRなど)が起こったり、使用済み自動車そのものがナンバープレートを外されて放置(不法放棄)されるおそれがあります。

最大の検討課題

現在、自動車リサイクル法の在り方について検討の議論がされているところです。リチウムイオン電池をどうするのか、用途が広がるCFRPの処理・リサイクルをどうするのかなど様々なテーマがあるのですが、最大の検討課題はASRだと思います。

ASRは、多少金属が残っているとはいえ、有価物として売買されないモノです。そのため廃棄物として処理されるのですが、いくつかの方法があります。まずは金属精錬所で「金属回収+プラスチックは熱回収」、金属が少ない場合などは焼却炉で「プラスチックを熱回収」、細かく機械選別したのちに金属やセメント原料としてリサイクルされますが、廃プラスチックのマテリアルリサイクルはほとんどされていません。 最終的に有効利用の手立てがない場合は、単純焼却や管理型最終処分場で埋立されます。

実は、焼却や管理型の埋立は、中国が廃プラ輸入規制を始めたことから5年ぶりに再開されているようです。また、熱回収施設についても、老朽化の進行が問題になっています。仮に設備更新できなくなったら、自動車メーカーが資本投入なり買収なりするのかもしれませんが。いずれにせよ、先行きが不透明になりつつあります。

しかも、ASRのリサイクル率は85%を超えていますが、実は70%が熱回収です。熱回収をリサイクルに含めていない国際基準に照らすと、リサイクル率が15%となってしまいます。菅総理の掲げた2050年温室効果ガス実質ゼロ目標との整合性も取れません。

これからの検討課題

自動車メーカーはCar toCarという水平リサイクルを目標に掲げており、そのためにはプラスチックのマテリアルリサイクルが必須です。方法としては、破砕する前にプラスチックを取り外すか、破砕後に高度な選別をするかのどちらかです。前者は、リサイクル業者としてはコストメリットが出ないため、エアバッグやフロンのように費用(特に作業費)を補填する必要があります。後者も、高度選別機の導入にかかる費用を補填する必要があるかもしれません。いずれも、費用だけの問題ではなく、スペースの問題もあるため、場合によっては専用の選別工場が必要になるかもしれません。

さらに厄介なことに、電気機器や内装プラスチックの臭素系難燃剤の使用規制が、EUを筆頭に世界的にだんだん厳しくなっているのです。リサイクル原料は、一昔前の基準で作られたものですので、最新の基準を満たせない可能性があります。マテリアルリサイクルするには、破砕前にどの程度丁寧に分別できるか、または破砕後のASRから難燃剤の有無を見分ける高度選別が成否を分けます。

ASRは日本国内で毎年60万トン弱が発生しており、その半分以上がプラスチックです。このうちどれくらいを熱回収=CO2として排出することなく、マテリアルリサイクルできるのか、日本だけでなく世界の自動車リサイクルの課題となっています。2050年CO2実質ゼロへ向けた長期目標に沿った計画を立てなければなりません。