気候変動対策としてのリサイクル

2020年09月15日

昨今の海洋プラスチック問題を背景に、脱プラスチックやバイオプラスチック、プラスチックリサイクルの推進など様々な取り組みがされています。そのためもあって、プラスチックのリサイクルを進めることは、海洋プラスチック問題解決の手段の一つであるかのように見えます。

しかし、海洋プラスチック問題は、不法投棄やポイ捨てというモラルの問題でしかなく、リサイクルできるかどうかとは、ほぼ無関係です。確かに積極的に回収されることで、ポイ捨てを防止することはできますが、あくまで間接的な効果です。 

それでも、海洋プラスチック問題がきっかけでリサイクルが進むのであれば好ましいことです。ということで、リサイクルの環境保全上の効果には、どのようなものがあるか改めて考えてみましょう。

なお、ここではグローバルスタンダードに従って、マテリアルリサイクルのみをリサイクルとして、サーマルリサイクルは熱回収を伴う焼却として、リサイクルには含まずに考えます。 

リサイクルの効果を考えるには、下記の「資源採取時」「処分時」「製造時」の3つの場面に分けて考えると分かりやすいでしょう。(他の考え方、整理の仕方もあります)

リサイクルの環境保全上の効果

資源採取時

リサイクルは資源の有効利用ですので、その分は新たに資源採取しなくて済みます。結果的に枯渇資源の保全につながり、現代社会・経済の持続可能性を高めるはずです。さらに、採取に伴う開発・森林などの伐採を防止することにもなり、生物多様性の保全や温室効果ガスの排出を防止するかもしれません。

処分時

一方で、処分方法としてリサイクルを採用することで、焼却や埋立をしなくて済みます。焼却によりCO2が排出されますし、埋立処分場からはメタンが発生、開発により生物多様性が失われますので、それを防止することになります。とはいえ、高効率な熱回収や埋立地の跡地利用によって評価は変わりますし、CO2も生物多様性もオフセットできます。また、リサイクルするためにもエネルギーを使用しますから、焼却/埋立とリサイクルのどちらが環境負荷が低いかはケースバイケースです。

製造時

もう一つの重要なポイントは、製造時の環境負荷低減です。バージン材を製品に加工するプロセスでは、バージン材以外にも資源やエネルギーを必要としますが、リサイクルをすることでこのプロセスを省略できます。省略できるプロセスが多いほど、リサイクルの優位性が高まります。

具体例で考えるリサイクルの効果

鉄のリサイクル

一口にリサイクルといっても、対象や方法によって効果は異なります。リサイクルによる環境負荷低減がもっとも大きいのは、鉄をはじめとする金属のリサイクルでしょう。

たとえば、鉄はリサイクルすることで、鉄鉱石から作る(酸化鉄を還元させる)よりCO2の排出量を3/4も削減できます。それだけコストの削減量も多く有価物として取引されるため、リサイクルは進んでいます。しかも鉄鋼業からのCO2排出量は、日本全体の排出量の14%、製造業だけで見ても45%を占めているのですから、その影響は産業界最大です。

プラスチックはどうでしょうか。

特にペットボトルについては、様々な研究がされていて、リサイクルによりCO2の排出量が41%減少しているということです。しかし、リサイクルとの比較対象として、現状を反映して焼却、埋立の両方をミックスしています。COの2排出量が少ない単純埋立の比率によっては、評価は異なるでしょう。

それでも、原油採掘~PET樹脂に加工するまでの工程が省略できる=リサイクルによる代替効果は大きいようです。

紙や木のリサイクルは特殊です

資源採取の方法による違いが大きいのが木材です。再生可能資源であるためです。計画的に植林(再生)される森林の木材を使う場合と、伐採後放置される場合とでは、気候変動はもちろん生物多様性への影響も違います。

植林された木材を長期間、多くの場所で使うのであれば、CO2の固定にもつながりますし、最終的に分解や焼却されたとしても、 プラスマイナスゼロ(カーボンニュートラル)です。CO2を大量に使う鉄やコンクリートとは正反対です。

一方、植林されていないと、地球環境に対する損失は大きくなります。

つまり、資源採取の方法をどちらで設定するかで、リサイクルの効果が変わります。もちろん、植林材を使用するのだとしても、基本的にはリサイクルのほうが優位だとは思いますが。

セメントでのリサイクル

先ほど木材と比較したコンクリートですが、セメントからできています。セメントリサイクルは非常に有効なリサイクル方法ですが、鉄リサイクルと違って、酸化鉄を還元するような大きなプロセスが省略されるのではありません。セメントでリサイクルされるものは、通常のセメント製造の工程に入り、通常の原料とほぼ同じか、むしろ手間やエネルギーをかけてリサイクルされます。例えば含水率の高い汚泥などは、エネルギーを消費しますし、破砕や洗浄などの事前処理をすることもあります。

一方、廃油やプラスチックを代替燃料として使うこともできます。化石燃料を使用しないで済みますし、廃プラが単純焼却されるよりCO2の削減になります。 

トータルで見ると、セメントリサイクルの優位性は、CO2削減というより、資源採取量の削減と、埋立処分場の逼迫対策というべきでしょう。セメントリサイクルの有用性についてはこちらもご参考ください。

まとめ

ここでご紹介したリサイクルについても、詳細に見ていけば他にも課題があるのですが、ここでは全体を概観するにとどめました。リサイクルにもいろいろありますし、メンテナンスにより長寿命化・リユースしたほうがよい、素材を変えたほうがよい、など選択肢はたくさんあります。

どれがよい方法か迷うところです。

最終的には、製造時に排出したCO2を吸収(オフセット)するコストを、製品価格に反映させるべきです。いわゆる、外部不経済の内部化です。そうなると、自ずからCO2排出量が少ない方法が選択される=高度なリサイクルが今以上に推進されることでしょう。

  • 参考リンク

・鉄のリサイクル

「鉄リサイクル」は温暖化対策になるか

大幅なCO2削減となる「鉄リサイクル」の推進[東京製鐵×九州電力 後編]

・プラスチックのリサイクル

PETボトルのリサイクルによるCO2排出量の削減効果算定

・セメントのリサイクル

廃棄物のセメント資源化について

・リサイクル全般

 リサイクルって温暖化対策になるの?


こちらの記事もおすすめ

マニフェストには一見しただけでは書き方が分からない項目がいくつもあります。名称の意味が分からない、誰が書くのか分からない、そもそも必要性が薄い項目もありますが、不適切な記載は法令違反になりますので注意が必要です。(百万円以下の罰金、1年以下の懲役の対象)

昨今の海洋プラスチック問題を背景に、脱プラスチックやバイオプラスチック、プラスチックリサイクルの推進など様々な取り組みがされています。そのためもあって、プラスチックのリサイクルを進めることは、海洋プラスチック問題解決の手段の一つであるかのように見えます。

有価物

2020年09月08日

引き渡す際に費用の支払いが必要な廃棄物に対して、取引価値のあるものとして売却できるものとして使われる概念。無償で譲渡されるものは含まれない。総合判断説によれば、有価物であっても廃棄物になり得る。

逆有償

2020年09月03日

逆有償とは、文字通り有償の逆のこと。有償とは、受けた利益に対して、対価を支払うことですので、逆有償というと支払いの方向(金の流れ)が逆になることを指します。

手元マイナス

2020年09月02日

輸送にかかる費用のほうが売却価格より高いため、発送する時点(手元)で損失が発生してしまう状況をいう。販売を目的とせずに生成されたものを売却する場合や、価値が大幅に下がった商品を売却する場合が想定される。

ゼロ円有価

2020年09月01日

ぜろえんゆうか、と読む。0円有価、とも書く。ゼロ円の代わりに無償(むしょう)という表現も使われる。