使用済紙おむつは、一般廃棄物?

2020年04月15日

「自分にはおむつなんて関係ない」という方もいらっしゃるかもしれませんが、実はいま、紙おむつのリサイクルが熱いので、少々お付き合いください。2010年から2018年までの間で、乳幼児用の使用量は1.7倍に、大人(高齢者、入院患者)用も1.5倍に増えているそうです。少子化のため乳幼児用は今後減少する見込みですが、高齢者の介護用のものが増えるため、全体では増え続ける見込みです。現在のところ一般廃棄物に占める割合は重量比で5%弱、地域差はありますが2030年には7%近くになるそうです。

紙おむつの処理については、環境省と国土交通省が別々で取り組んでいます。先に検討を始めたのは国土交通省のようで、2018年1月に「下水道への紙オムツ受入実現に向けた検討会」を立ち上げています。3つある案の1つが、トイレに専用装置を備え付け、丸ごと破砕してディスポーザーよろしくそのまま下水に流すという方法です。そんなことをしたら海洋プラスチック問題を助長するのでとんでもない、と思ったのですが、その問題も念頭におきつつ現在も検討が進んでいるようです。

一方の環境省は、2019年11月に「紙おむつリサイクルガイドライン策定に関する検討会」を立ち上げ、5カ月後の2020年3月31日の第3回検討会では 「使用済紙おむつの再生利用等に関するガイドライン」を取りまとめるというスピード決着です。既にリサイクル技術は確立しつつありましたし、国交省の下水道案に先を越されるわけにもいかなかったのかもしれません。

水を吸った高分子吸収剤は?

環境省のガイドラインでは、再生利用による環境影響・社会的効果を想定、回収方法の検討やリサイクル技術の取りまとめ、さらに産業廃棄物・一般廃棄物の区分にも触れています。

使用前の紙おむつは、パルプ52%、樹脂28%、高分子吸収剤20%(つまりプラが48%)で構成されているそうです。

家庭から出る使用済紙おむつは事業活動とは関係ないので、当然一般廃棄物です。一方、保育所や病院など事業活動を行っている場所からの排出についても、明確に事業系一般廃棄物として解説してあります。

ガイドラインp.6より引用>

使用済紙おむつの主な排出場所は、家庭、事業所(保育園、老人福祉施設等、病院等)である。家庭から排出された使用済紙おむつは、市区町村において家庭系一般廃棄物として処理される。事業所から排出された使用済紙おむつは、事業系一般廃棄物として処理される。

確かにし尿(=大小便・一般廃棄物)が付着しているため、重量比で言えばそれが相当多いでしょう。しかし、水分を吸った“高分子吸収剤”は、重さを増した廃プラor汚泥の単一品目なのか、廃プラ+廃酸or廃アルカリor尿(一般廃棄物) の混合物のどちらが妥当なのでしょうか???

個人的には、性状、荷姿、適正処理施設・方法、許可制度を考慮するならば、水分を含んだ高分子吸収剤は、“汚泥”単品でよいのではないかと思います。さらに使用済みの紙おむつとなると、外側が不織布で、パルプは内側にあるという外見も踏まえ、メインの汚泥+少しの廃プラの混合物で行きたいところです。

さらにさらに、仮に小便がなく、硬めの大便をトイレに流せた場合など、かなりキレイな状態(?)のおむつはどうなのでしょうか。表面は不織布で覆われていますし、吸水していない高分子吸収剤もあるため、廃プラ単品の産業廃棄物扱いにしたくなります。

最終的には

以上のような廃棄物処理法上の解釈はともかく、常識・感情論では、使用済みの紙おむつは、し尿が付着したおむつ=汚物以上の何物でもありません。キレイな物だけ分別することもできません。そして産廃業界では、し尿が混入した廃棄物を処理するインフラも文化もありませんから、受入れには相当な抵抗感があるはずです。基本的に、し尿は下水か浄化槽のどちらかに行くものですから。

したがって、事実上「使用済み紙おむつは例外なく一般廃棄物」としているガイドラインは妥当だと思います。このように、(廃棄物処理法に限りませんが)法の運用・解釈というのは往々にして現場の状況を踏まえて柔軟なことがあります。

これとよく似ているのは、未使用であっても注射針が含まれる場合は感染性廃棄物とみなす運用です。法律上は疑問ですが、現場の実情、安全性を考えれば妥当な解釈です。

廃棄物処理法に基づく感染性廃棄物処理マニュアル p.4より>

医療器材としての注射針、メス、ガラス製品(破損したもの)等については、メカニカルハザードについて十分に配慮する必要があるため、感染性廃棄物と同等の取扱いとする。また、鋭利なものについては、未使用のもの、血液が付着していないもの又は消毒等により感染性を失わせたものであっても、感染性廃棄物と同等の取扱いとする。

担当:シニアコンサルタント 堀口昌澄

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