委託基準④注意義務違反~行政処分

2020年01月17日

注意義務、つまり注意を払う義務が、排出事業者に課せられています。これは努力義務ですので罰則もなく、具体的に何をすべきかは法の条文では定かではありません。そのため、これまでご紹介した「委託基準①~③」を守っていれば基本的には問題にはなりません。

ところが、処理業者が不法投棄をしてしまうと、「委託基準①~③」に違反している場合はもちろん、注意義務違反であっても、排出事業者が撤去などを命じる措置命令(行政処分)を受ける可能性があります。

  • どんな場合に行政処分が出るのか

まず、処理費が著しく安かった場合。適正な費用を支払わないことで、処理業者が適正処理できなくなったのではないか、それだけ安いのだから、不法投棄している可能性を考えてチェックすべきだったのではないか、といった理由から、排出事業者に責任を負わせよう、という考え方です。その地域の平均価格の半額以下の場合は特に要注意です。

他にも、処理業者が改善命令などの行政処分を受けている、地元の住民の反対運動を受けている、損害賠償の訴訟を起こされているなどの問題を抱えているのに、現場を全く見に行かなかったような場合も、排出事業者に行政処分が出る可能性があります。

このような行政処分を回避するために、①市況に沿った適正な処理費を支払うこと、②定期的に現地確認に行くこと、などの対策が取られています。

条文・通知解説

以下、関連条文、通知を引用・解説します。通常はここまで理解していなくてもよいと思いますが、トラブル発生時や社内教育をされる際にはご参考いただくとよいでしょう。

文中適宜、省略、(カッコ)で解説・補足、条文にリンクをしています。

事業者は、その産業廃棄物の運搬又は処分を委託する場合には、当該産業廃棄物の処理の状況に関する確認を行い、当該産業廃棄物について発生から最終処分が終了するまでの一連の処理の行程における処理が適正に行われるために必要な措置を講ずるように努めなければならない。 

この条文は、委託基準の一部で、排出事業者に課せられた注意義務の根拠となっています。赤字部分がその内容ですが、これでは抽象的ですので、次に紹介する条文、通知でより具体的な説明がされています。

なお、冒頭で「努力義務」と説明をしましたが、この条文の最後に「努めなければならない」とあるためで、努力を促しているだけですので直接の罰則はありません。本当に罰則があるかどうかを確認する場合は、第25条以降をチェックします。

関連通知・条文

上記の、法第12条第7項の「処理の状況に関する確認」について、施行通知で解説してあります。 

第九  排出事業者による処理の状況に関する確認の努力義務の明確化

事業者が委託先において産業廃棄物の処理が適正に行われていることを確認する方法としては、まず、当該処理を委託した産業廃棄物処理業者又は特別管理産業廃棄物処理業者(以下「産業廃棄物処理業者等」という。)の事業の用に供する施設を実地に確認する方法が考えられること。 また、第十一の優良産廃処理業者認定制度に基づく優良認定を受けた産業廃棄物処理業者等に産業廃棄物の処理を委託している場合など、その産業廃棄物の処理を委託した産業廃棄物処理業者等により、産業廃棄物の処理状況や、事業の用に供する産業廃棄物処理施設の維持管理の状況に関する情報が公表されている場合には、当該情報により、当該産業廃棄物の処理が適正に行われていることを間接的に確認する方法も考えられること。 

実地確認、いわゆる現地確認により直接確認する方法と、公開情報をもとに間接的に確認する方法が提示されています。

下記は、措置命令(行政処分)が出される条件を説明しています。


  • 法第19条の6第2号(行政処分=措置命令が出される条件)

排出事業者等が当該(=不適正処理された)産業廃棄物の処理に関し適正な対価を負担していないとき、当該(=不適正な)収集、運搬又は処分が行われることを知り、又は知ることができたときその他第十二条第七項、第十二条の二第七項及び第十五条の四の三第三項において準用する第九条の九第九項の規定の趣旨に照らし排出事業者等に支障の除去等の措置を採らせることが適当であるとき。 

要するに、都道府県知事は、赤字部分に該当する排出事業者に対して、不適正処理/不法投棄された廃棄物について、必要な措置を取るべき命令を出せる、ということです。

また、前出の法第12条第7項等が、斜字部分で引用されています。 処理の状況に関する確認(現地確認、間接確認)にも関係してきます。

ここでは第2号だけ抜粋しましたので、詳細は第19条の6全体をご覧ください。

下記の通知では、赤字部分でさらに詳しい例、説明が挙げられています。

以下の赤字部分に該当すると、注意義務違反として措置命令を受ける可能性があるということです。

  1. (都道府県知事は)当該産業廃棄物の一般的な処理料金の範囲を客観的に把握すること。そして、その処理料金の半値程度又はそれを下回るような料金で処理委託を行っている排出事業者については、当該料金に合理性があることを排出事業者において示すことができない限りは、「適正な対価を負担し ていないとき」に該当するものと解して差し支えない。
  2. 「当該収集、運搬又は処分が行われることを知り」とは、排出事業者等において当該不適正処理が行われることの認識予見があること
  3. 「知ることができたとき」の例としては、 処理業者が、過剰保管等を理由として改善命令等の行政処分を受け、又は不適正処理を行ったものとして行政の廃棄物部局による立入検査等を受け若しくは周辺住民から訴訟を提起されるなど、不適正処理が行われる可能性が客観的に認められる状況があったにもかかわらず、排出事業者がその状況等について問い合わせや現場確認などの調査行動を何ら講ずることなく、当該業者に対して処理委託を行った場合 
  4. 「趣旨に照らし排出事業者等に支障の除去等の措置を採らせることが適当であるとき」としては、例えば、委託先の選定に当たって、合理的な理由なく、適正な処理料金か否かを把握するための措置(例えば、複数の処理業者に見積もりをとること)、不適正処理を行うおそれのある産業廃棄物処理業者でないかを把握するための措置(例えば、最終処分場の残余容量の把握、中間処理業者と最終処分業者の委託契約書の確認、処理実績や処理施設の現況確認、改善命令等を受けている場合にはその履行状況の確認)等の最終処分までの一連の処理が適正に行われるために講ずべき措置を講じていない場合
  5. 法第 12 条第7項又は第 12 条の2第7項の規定によるその産業廃棄物の 委託先での処理の状況に関する確認を行っていない排出事業者及び中間処理業者 については、「排出事業者等に支障の除去等の措置を採らせることが適当である とき」に該当する可能性があること。 

逆に、以下のような措置を講じていれば、注意義務をはたしているということで、措置命令を受けずに済む(可能性が高い)ということです。

優良産廃処理業者認定制度において認められた産業廃棄物処理業者は、産業廃棄物の処理状況や、産業廃棄物処理施設の維持管理の状況など、産業廃棄物の処理に関する情報を公表することと されているところであるが、排出事業者等が、これらの情報を十分に比較、吟味した上でその産業廃棄物の処理の委託先を選定している場合には、注意義務の履行に関する一つの要素として考慮できる

実は、これまでのところ注意義務違反を根拠に措置命令が出された例はないようです。「だったら大丈夫」と思ってしまいますが、第一号の不名誉にあずかることがないように、注意を払って処理業者と付き合うようにしましょう。不法投棄さえされなければ、行政処分を受けることなどないのですから。