石炭火力発電停止とリサイクル業界への影響

2020年08月11日

発電効率の低い石炭火力発電所を2030年までに廃止するという政府方針が発表されました。かなり大きく取り上げられたので、ほとんどの方がご存じでしょう。具体的な内容や計画はこれから議論を進めるということで、慎重論もあるようですが、近年の日本の環境政策が国際世論に押されて後手後手に回っていることを考えると、結果的にこの方針より厳しい方向に行く可能性もあると思います。

いずれにせよ、石炭火力発電が今後減っていくことは間違いありませんが、これが国内の資源循環に及ぼす影響は少なくありません。

石炭灰全国実態調査報告書(平成31年 石炭エネルギーセンター)によると、日本全体の平成29年(2017年)度の石炭灰(発電+そのほか用途による石炭燃焼後の灰)の発生量は1,280 万 t でした。そのうち、セメント分野での有効利用量は886 万 t(※輸出分を含むと思われます)あったということです。

ご存じのように、セメントリサイクルは産業廃棄物リサイクルの主力ともいうべき方法で、こちらのセメント協会のHPで分かる通り、2016年度にはセメント業界は国内の約2800万tの産業廃棄物をリサイクルしています。このうちの約759万tが石炭灰によるものですので、なんと3割以上を占めていることになります。石炭灰の重量はほとんど乾燥状態での計量ですから、汚泥に換算するとおそらく3倍以上の重量に相当します。

石炭火力発電が減れば、それだけセメントでの産業廃棄物の受入余力が増えるということです。高効率の石炭火力発電所は残すそうですし、セメント工場では受入設備の問題もあるため、それほど単純な話ではありませんが。

※:石炭灰は輸出(セメントリサイクル用途)されており、環境省発表によると平成31年(2019年)の輸出量は約102万t(前年比約37万t減)でした。

セメントリサイクルの他の要素

一方で、セメントの生産量はピーク時には約1億tあったところ、現在では半減しており、今後もう少し減少する見込みです。そのため(生産量が減少しすぎると問題ですが)セメント業界にとって廃棄物の処理費収入はさらに重要になるはずです。石炭灰だけでなく、廃プラのさらなる活用も含め技術開発は進んでいくでしょう。これまで使えなかった産業廃棄物もリサイクルできるようになるかもしれません。

したがって、セメントリサイクルだけを考慮すると、中期的には積極的な受け入れが進む可能性が高いと考えられます。排出事業者としては、産業廃棄物の処理・リサイクルの選択肢が広がり、業界全体の処理費も現在より安定する要因となるでしょう。

とはいえ石炭火力の削減は、最終的には10年後が目途の話です。

そのころ災害廃棄物がどの程度(定常的に)発生しているか、首都直下型地震、東南海地震が発生したら震災ガレキや物流網はどうなるか、焼却や埋立処分場の新設ができているか、なにより国内の製造業や景気の動向も全くわかりません。先が読めない時代ですが、資源循環に影響を与える動きのひとつとして、石炭火力発電の動向には注目しておくとよいでしょう。


こちらの記事もおすすめ

マニフェストには一見しただけでは書き方が分からない項目がいくつもあります。名称の意味が分からない、誰が書くのか分からない、そもそも必要性が薄い項目もありますが、不適切な記載は法令違反になりますので注意が必要です。(百万円以下の罰金、1年以下の懲役の対象)

昨今の海洋プラスチック問題を背景に、脱プラスチックやバイオプラスチック、プラスチックリサイクルの推進など様々な取り組みがされています。そのためもあって、プラスチックのリサイクルを進めることは、海洋プラスチック問題解決の手段の一つであるかのように見えます。

有価物

2020年09月08日

引き渡す際に費用の支払いが必要な廃棄物に対して、取引価値のあるものとして売却できるものとして使われる概念。無償で譲渡されるものは含まれない。総合判断説によれば、有価物であっても廃棄物になり得る。

逆有償

2020年09月03日

逆有償とは、文字通り有償の逆のこと。有償とは、受けた利益に対して、対価を支払うことですので、逆有償というと支払いの方向(金の流れ)が逆になることを指します。

手元マイナス

2020年09月02日

輸送にかかる費用のほうが売却価格より高いため、発送する時点(手元)で損失が発生してしまう状況をいう。販売を目的とせずに生成されたものを売却する場合や、価値が大幅に下がった商品を売却する場合が想定される。