謎多き専ら物

2020年11月20日

専ら物とは、「金属のスクラップ、ガラス、古紙、古繊維のことで、廃棄物処理法の規制が免除されている」という理解をされている方は多いと思います。大枠では間違っていませんが、実はそう単純な話ではありません。

  • 専ら物の成り立ち

廃棄物処理法は、高度経済成長によって有害な産業廃棄物が大量に発生する中で、1970年に成立しました。それまで規制がなかった民間の処理業者に許可を取らせて、産業廃棄物の適正処理を確保するために作られました。

ところが、缶、ビン、紙、繊維などは、江戸時代から何の問題もなくリサイクルされてきたため、いまさら許可など不要だろうということで、許可不要となりました。既得権の保護という側面もありましたし、そもそも 個人でリヤカーを曳いている零細業者に許可を取らせるのは非現実的だったのでしょう。専ら物を扱うには、登録も届け出も不要で、審査もなく、対象4品目である限りは許可不要という、廃棄物処理法で最古にして最強の特例制度です。

古いということで、その後に新設された制度との調整がうまくいっていない部分があるのですが、最強であるだけに多少の齟齬はモノともしません。そのため初めての方には分かりにくく、疑問が生じやすい制度になっています。その点も含めて下記で解説しますが、最後に関連条文、関連通知を掲載していますので、詳細はそちらもご参照ください。


  • 名称

そもそも、「専ら物(もっぱらぶつ)」という言葉自体、廃棄物処理法の条文では使われていませんが、国の公式文書でも使われる、準法律用語です。条文の「専ら再生利用の目的となる一般(産業)廃棄物」という表現の先頭2文字と最後の1文字を取った形です。「専ら業者(もっぱらぎょうしゃ)」という表現をすることもあります。

  • 対象品目

専ら物の具体的な対象品目は、法律の条文では触れておらず、通知に記載されています。

専ら物=古紙、くず鉄(古銅等を含む)、あきびん類、古繊維 

通知は法施行時の考え方を示したものであり、絶対的なものではありません。社会経済状況の変化や、地方の状況に応じて解釈の違いはあり得るはずですが、現状はこの4品目だけが対象として運用されています。ペットボトルも専ら物とすべきだという議論はありますが、今のところそうなる見込みはありません。

また、古繊維の対象を、天然繊維に限るという解釈(行政指導)も存在します。これは産業廃棄物の「繊維くず」が特定の業種から排出された天然繊維のみを対象としている一方で、合成繊維は「繊維くず」ではなく、廃プラスチック類に該当するため、繊維ではないという理解に基づくものと思われます。しかし、通常は「合成繊維単体」or「天然繊維との混紡」であっても、使用済みであれば「古繊維」に該当し専ら物として運用されています。産業廃棄物の定義を引用する必要はありませんし、合成繊維だって、繊維の一種なんですから。

  • 対象処理方法

条文でも通知でも「再生利用」という表現しかされておらず、これをリサイクルと解釈するとサーマルリサイクルも含まれそうです。しかし、慣習的に昔ながらのマテリアルリサイクルだけを想定していますし、循環型社会形成推進基本法でも、

この法律において「再生利用」とは、循環資源の全部又は一部を原材料として利用することをいう

ということで、再生利用=原材料として利用=マテリアルリサイクルとしており、サーマルリサイクル=熱回収を含んでいません。したがって、古紙や古繊維がRPFやRDFに加工され、燃焼する前に有価物となっていたとしても、用途が燃焼による熱利用ですので、専ら物とは考えられていません。

  • 対象業者

条文では「専ら再生利用の目的となる一般(産業)廃棄物のみの収集又は運搬(処分)を業として行う者」

通知では「専門に取り扱っている既存の回収業者等」

とされています。“のみ、専門、既存”ということですので、様々なものを扱う業者or新規参入業者は対象外と読むことができます。施行当時はそのつもりだったのかもしれませんが、この条件を満たす業者は今はほとんど存在していないでしょう。この部分は、現在は完全に空文化し、新規でも誰でも、対象4品目を扱うための許可は不要と(指導も含めて)されています。

  • 特例内容

条文を確認すると、許可が不要、マニフェスト運用が不要という規定しか存在しません。したがって、産業廃棄物に該当する場合は、契約書の作成等の事務は必要です。

多くの場合、業種限定により古紙、古繊維は一廃になることが多いので、問題となるのは産廃となり得る金属くずとあきびん類(ガラス)です。ところが、これらが一定量、単体で排出される場合はほとんど有価になりますので、問題は複合物の場合です。しかし、複合物であるために有価売却できないと、そもそも複合相手のプラスチック、がれき、木などの許可を取得(=同時に金属くずも)すべきですので、もはや専ら物ではなくなってしまいます。

  • 実際は

ということで、法律上は「専ら物は契約書の作成が必要」というは規定は、盲点となりがちですので、コンサルやセミナーでは説明します。しかし、実務上はほとんどそのような状況にはなりません。

怖いのは、「うちはゴミ屋じゃねぇ、専ら物をやってるんだ」とか言って、「専ら物+その他廃棄物」の複合物を処理費を取りながら無許可で扱っている業者です。半鉄(はんてつ)、雑品(ざっぴん)などとも言われるものですが、無許可営業ですし、委託基準違反を問われかねませんので、ご注意ください。そのため、専ら物であっても、処理業の許可を取得している業者にしか委託しない方針を取っている会社もあります。

関連条文

下記条文から、①許可が不要、②許可がない業者に委託してよい(①と表裏一体ですが)、③マニフェストが不要ということが読み取れます。

一般廃棄物収集運搬業の許可不要(法第7条第1項)

(排出事業者が)一般廃棄物収集運搬を委託できる者(施行規則第1条の17第1号)

一般廃棄物処分業の許可不要(法第7条第6項)

(排出事業者が)一般廃棄物処分を委託できる者(施行規則第1条の18第1号)

産業廃棄物収集運搬業の許可不要(法第14条第1項)

(排出事業者が )産業廃棄物収集運搬を委託できる者(施行規則第8条の2の8第2号)

産業廃棄物処分業の許可不要(法第14条第6項)

(排出事業者が )産業廃棄物処分を委託できる者(施行規則第8条の3第2号)

マニフェストの交付不要(施行規則第8条の19第3号)

関連通知

下記の2つの通知には、いずれも下記の同じ文言が記載されています。具体的な対象品目は、条文にではなく、通知にだけ記載されています。

産業廃棄物の処理業者であっても、もっぱら再生利用の目的となる産業廃棄物、すなわち、古紙、くず鉄(古銅等を含む)、あきびん類、古繊維専門に取り扱っている既存の回収業者等は許可の対象とならないものであること。

廃棄物の処理及び清掃に関する法律の施行について 公布日:昭和46年10月16日 環整43号(もっとも古い通知の一つ、「第3 産業廃棄物に関する事項 4産業廃棄物処理業 (2) を参照)

産業廃棄物処理業及び特別管理産業廃棄物処理業並びに産業廃棄物処理施設の許可事務等の取扱いについて 環循規発第2003301号 令和2年3月30日 (日付は最近ですが、古い通知の更新版、「第1 産業廃棄物処理業及び特別管理産業廃棄物処理業の許可について 15 その他 (1) を参照)

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