CSVでNIMBYを乗り越える

2019年12月03日

NIMBY(Not In My Back Yard)をご存知でしょうか。「その施設が社会に必要で、どこかに設置しなければならないことも分かる。しかし自宅の近くには設置しないで欲しい。」ということです。代表格は廃棄物の処理施設ですが、それ以外にも保育所、空港、鉄道、刑務所、発電所、火葬場などが挙げられます。

保育園のお散歩の絵
保育園のお散歩の絵

施設から受けるデメリット

反対する合理的な理由としては、「損害が発生する、又はその恐れがあること」言い換えると「損害発生の蓋然性」が挙げられます。その蓋然性をどう見積もるかについては、科学的な予測、過去の経験則、施設運営者に対する信頼感、が考えられます。そして、仮にその損害が発生したとして、具体的にどの程度の損害なのか、そしてそれに対する嫌悪感、拒絶感がどの程度なのかも重要な要素です。これが大きいのであれば、どれほどメリットがあったとしてもハイリスクハイリターンであり、個人的にはそのような施設の設置はすべきでないと思います。

施設によるメリット

一方、その「損害発生の蓋然性」に対して、地域住民が相応のメリットを受けることになれば、それとのバランスで賛成か反対かが決まってくるでしょう。例えば雇用創出や地域経済の活性化の他、プールや公園など付随施設からメリットを受けられることもあるでしょう。金銭的メリットとして分かりやすい例としては、原発立地自治体に対する交付金が有名です。

施設の社会的必要性

例えばIR、イージスアショア、米軍基地、リニア新幹線など、必要性について疑問が呈されている施設もありますが、そもそも施設の必要性は、賛成⇔反対の判断に影響するのでしょうか。個人的には、あまり影響しないような気がします。損害の大きさだけでなく「なぜ自分たちだけ損をするのか?」という不公平感が反対の理由なのであれば、なおさらです。

それに、もし本当に社会に必要な施設であれば、社会全体からその施設に対してお金が流れてくるでしょうし、結果として何らかの形でその地域に相応の見返り(上述のメリット)があるはずです。それで不公平感を解消できるとは限りませんが。

あまりにも平凡ですが

これまでの要素の中で、最も変動幅が広く、なおかつ足し算ではなく掛け算になるものは、赤字で示した「信頼感」「嫌悪感」「拒絶感」「不公平感」という感情の問題だと思います。ここが最大のポイントでしょう。

感情の問題に対しては、ウソや誤魔化しのない誠実な対応、他の地域での実績/住民との関係に対する理解、 事故やトラブルの実例と影響の理解、そういったものの積み重ねしかありません。

しかし、プロジェクトが大きいほど、関わってくる関係者が多く調整が難しくなり、誤解や行き違いが生じやすいはずです。ちょっとしたボタンの掛け違いでご破算になると、社会的な損失とも言えますので、説明する側には細心の注意が必要です。

排出事業者のCSV

中国の禁輸措置が今後緩和されることはおそらくないでしょう。処理施設は逼迫し、処理費は高止まり、不法投棄や不適正処理も減少する要素はありません。

このような状況の中、資源循環/廃棄物処理業界に対しては、処理施設の新増設を進めていくことを期待するしかありません。 そのためにも、環境汚染を生じさせることなく誠実に業務を行い、ステークホルダーに対する説明責任を果たしていくことで、信頼を積み重ねてもらわなければなりません。

一方、排出事業者としては、信頼できる処理業者を見分け、適正な対価を支払わう責務があります。しかし、そこからさらにCSV的に踏み込んで、資源循環を進めるパートナーとして協業・提携を行い、同時に業界のレベルアップに寄与することはできないでしょうか?おそらくこのような動きが、地域住民に対する安心感にもつながり、NIMBY問題の緩和につながるはずです。

単なる処理委託から、資源循環のビジネスに主体的にかかわっていくことで、自社の排出物の安定的な処理・リサイクルがしやすくなります。結果として資源循環業界にもプラスとなるはずです。委託から協業・CSVへ、このような視点で、自社の資源循環の在り方を見直してみてもよいかもしれません。

CSV : Creating Shared Value=共通価値の創造。企業が社会と関わっていくなかで、社会的課題を共同して解決・価値を創造することは、企業にもプラスになるという考え方。