今後の廃プラスチック資源循環について その2

2020年07月27日

前回は、国と東京都のアンケート結果から、今後の廃プラ処理市場について考えてみましたが、今回は政策の方向性について考えてみましょう。

現在「プラスチック資源循環戦略」に基づいて環境省と経済産業省の合同の委員会で、具体的な施策が検討されています。

2020年7月21日の委員会では、「今後のプラスチック資源循環施策の基本的方向性(案)」が示されました。

まずは、以下に見出しをピックアップしましょう。

I. 考え方 

II. 主な施策の方向性 

 1.リデュースの徹底

 2.効果的・効率的で持続可能なリサイクル

 (1)リユース・リサイクル可能な製品設計

 (2)プラスチック資源の回収・リサイクルの拡大と高度化

  (i)家庭から排出されるプラスチック資源の回収・リサイクル

  (ⅱ)事業者から排出されるプラスチック資源の回収・リサイクル

  (ⅲ)効率的な回収・リサイクルの基盤整備

 3.再生素材やバイオプラスチックなど代替素材の利用促進 

 (1)再生素材の利用促進

 (2)バイオプラスチックへの代替促進  

 4.分野横断的な促進策 

 (1)消費者の理解・協力の促進

 (2)企業・地方公共団体による先進的な取組の展開 

 (3)ESG金融による取組の後押し

 (4)政府の率先的・基盤的な取組

注目ポイント

見出しだけを見ると、よくあるテーマが並んでいるだけですが、中身を見ると結構踏み込んでいます。

詳細は、原文をお読みいただくとして、私が注目したポイントをいくつかご紹介したいと思います。

  • 「素材」に着目して資源循環を進める
最初の「I. 考え方 」に記載されているのですが、素材に着目するというのは、リサイクルの基本です。これまでの我が国の法制度は、廃棄物処理法も各種リサイクル法も、排出事業者や製造者の責任の下で制度設計をしてきました。つまり、制度ごとの縦割りです。

しかし、リサイクルを目的とするのであれば、誰がどこから排出しようと、問題は素材なのです。リサイクルを推進するのであれば、素材ベースで制度設計をしなければならないのです。

素材別リサイクルは、2016年に「素材別リサイクル戦略マップ策定に向けた調査・検討の中間報告」がまとめられた際にも検討されています。工学系の大学教授が集まって、なかなか重厚な報告書を作られています。中間報告で終わっているようなのが残念ですが、今に続いているということにしましょう。

廃棄物&有価物、一般廃棄物&産業廃棄物、容器包装&家電&小型家電&自動車、これらは本来は重要な区分ではないのです。報道で「『プラスチック資源』 という新しい区分で、容器包装もプラスチック製品も一括回収」と言われていた通り、「一括回収」はこの考え方の一環です。

コンセプト(総論)は正しいと思います。問題は、これを各論レベルでどこまで徹底できるのか、制度設計から見直せるのか、例外措置のパッチワークで終わるのか、ということろです。今後の行方に注目しましょう。

  • 幅広い関係者にとって分かりやすく、システム全体として効果的・合理的で、持続可能な分別回収・リサイクル等を適正に推進

複数の制度が並列すると、素材は同じなのに、一緒に運べない、同じ場所でリサイクルできない、ということが起こります。抜本的な制度設計の見直しを示唆していると思います。どこまで踏み込めるかが問題ですが、合理的なシステムを構築して欲しいところです。

  • 各業種の実態を踏まえ、プラスチック資源の分別・リサイクルを促す環境を整備

一律で、硬直化した制度を決めるのではなく、業種による事情を踏まえ、複数のオプションを選択できなければなりません。「環境を整備」という言葉が各所に出てきますが、当然法改正も含めた環境を念頭においているようです。

  • 製造・販売事業者が消費者からプラスチック製容器包装・製品を円滑に 自主回収・リサイクルできる環境を整備する。

家電と小型家電については消費者からの回収システムがあります。しかし、プラスチック製品を円滑に自主回収するには、現在の「下取り」では不十分です。一般廃棄物の広域認定は、告示で対象品目(主に市町村で処理困難な物)が決まっているため、活用できません。したがって、ここでいう「環境を整備」は、確実に法改正を伴うでしょう。

今後の動き

詳細の設計は、まだまだ先になります。市町村のプラゴミ一括回収については報道では22年以降と言われていますが、バイオプラ導入についてはこれからロードマップを作るのですから、だいぶ先でしょう。「プラスチック資源循環戦略」は、2030年が目標年度です。

委員会は、委員の方はskypeで議論し、一般の傍聴者はそれをYoutubeで見ることが出来ます。オンラインでも議論はできていますので、今後も順調に定期開催されることでしょう。年度内には、それなりに具体化しているはずです。

また、目次にある「ESG金融による取組の後押し」は、これも並行して進んでいる「サーキュラー・エコノミー及びプラスチック資源循環ファイナンス研究会」の事を指していると思われますので、特に上場企業の方は見ておくとよいでしょう。

疑問と要望

  • 熱回収?

「(1)リユース・リサイクル可能な製品設計」に、“それ(=リサイクル)が難しい場合にも、熱回収可能性を確実に担保する”という記載がありました。

熱回収=CO2の排出を意味します。セメントや鉄鋼の製造のように、石炭を大量に使用し、CO2を排出する工程で代替燃料とするのであればともかく、あえて効率の高くない熱回収をプランに入れる必要はあるのでしょうか?

個人的には、エネルギーは再生可能エネルギーか高効率の火力からの調達を優先し、プラスチックは地中に貯留して、炭素を固定するほうが人類の将来のためには望ましいと思います。

  • 国際標準を視野に

製品の設計、バイオプラスチック、リサイクル技術開発、インフラ整備などが挙げられています。これらを国際標準とするように働きかけるか、国際標準が進んでいるのであれば素直に取り入れるべきと思います。

これをやらないと、ガラパゴスな制度/技術を作ることになり、結果としてシステムの効率が相対的に低くなり、それを抱える国内産業の国際競争力をそいでしまいかねません。

  • 成長エンジン?

最初の「I. 考え方」の最後に「プラスチック資源循環への貢献をグローバル市場における中長期的な競争力の 確保につながる新たな成長エンジン…」 とあります。これを実現するためには、インフラも含めたリサイクルの仕組みをグローバル市場に売り出さなければなりません。国内だけでは、どんな改善をしても、パイが増えませんので、ゼロサムです。

繰り返しになりますが、国際標準を見据えて、ISOにならなくとも早めに海外市場を視野に入れた動きが必要です。そのためにも、廃棄物処理法も、国際標準に合わせて、資源循環を重視するスタイルに変革すべきと思います。